さて前回は、オリジナルのヘッドホンハウジングに貫通孔をブチあけて巻貝部を接続した。
このままでもよいのだが、3Dプリントで製作しているなら、機械加工部をできるだけ減らして、
ハウジングも内製すべきではという内なる声が聞こえたため、
今回はVer.3として、ハウジングを3Dデータに起こした。
ただ、メーカー謹製のハウジング、表面だけなら何とか追えそうであったが、
裏面との整合を取るのは難度が高いというのが、これまで手を付けていなかった理由のひとつ。
しかし、やる気にはなってしまったため、ここは文明の利器に頼ることにした。
3Dスキャナーである。
今回入手したのはRevopoint社のPOP4という機種で、
いくつかのスキャン方法が利用できるのが特徴であるが、
ブルーレーザーのクロス照射モードを使用した。
理由は他方式より精度が出るからである。
スキャナーの使い方自体もかなりノウハウがあるようで、それはまた別記事としたい。
とりあえず先人の知恵を援用して制汗スプレーを黒ツヤ面に吹き付けてスキャンした。
また、スキャンデータがたいてい重くなり、いいGPUが必要とされるが、
今回の機器構成ではCPUモードで十分動作した。
(旧世代GPUのnvidia Titan Vを増設したのだが、古いのでCPUモードになってしまった。
はずなのだが、一部機能ではGPUの使用率が上昇する場面も見られ、よくわからない)。
生贄にしている改造元のヘッドホンはJVCのHA-RZ710である。
安価で、壊れにくく、ハウジングの細工がしやすい形状で、
50mmドライバーを採用しているものから選んだらこれになった。
メーカーが推している、ハウジング手前への同心円ダクトによるサウンドスタビライザー
といった機能は除去されてしまうので気にしなくてよい。
まあなんやかんやあって取得したハウジングの表裏データを統合したものがこれ。
外形は追えるものが取得できたが、このままでは、いらないサウンドスタビライザーをはじめとした不要形状、
またヘッドバンド接続部のスキャン精度不足によるはめ込み不良が予想されるため、
モデリングを追加していく。
また、巻貝接続部、ドライバー側パーツと接続するためのねじの受け側もモデリングした。
光造形での出力を想定しているため、樹脂強度が劣る分を柱の太さで稼いだりしている。
メッシュデータはAutodesk Fusionであれば、ある程度メッシュを削減すればソリッド化できる。
(というか、ソリッドデータにしておかないと、モデリングしたものとの統合ができない。
これに気付くのが遅く、手戻りした。。)
スキャンデータとキメラ状に統合したものが以下の図。
CAD上でははっきりとスキャン部とモデリングした部分がわかるが、
プリントしてしまえばプリント精度の陰に隠れてどうせわからないだろう
という甘い考えのもと、いったんこのまま進める。
以下はモデル上でのASSYイメージ。
召喚。
出力したものは、曇ったクリアとなるため、表面を均すためにクリアスプレーを吹くなどする。
水性塗料は、湿度に弱くお勧めできない。
多少表面を均す効果としては劣るが、自動車ヘッドライトの黄ばみを取った後に
再コーティングするためのケミカルであるガラスプロテクトUVを塗っている。
巻貝部の内側は曇っていてもコーティングを塗りこむ方法がないのでどうしようもないが。
巻貝部とくっつけた。
3Dスキャン部とモデリング部の違いは、よく見るとわかるが、
そういうテクスチャとして押し通してもいけそう。
ヘッドホンのドライバーがくっついている側も細工する。
元々は片出しのアンバランス接続(3極3.5mmのプラグ)の形式となっているが、
配線をしなおしてリケーブル可能なMMCX接続とした。
L側は元々のケーブル穴を利用し、R側は新たにドリルで穴をあける必要がある。
結局機械加工をしてはいるが、これをすることで、ヘッドバンドに細いケーブルを通している
仕様から解放されるため、断線に強く、またユニットのつけ外しが楽になる。
あまりはんだ付け部は見せたくない。
手が4本あるなら簡単だろうが。
もたもたしているとあまり安くないMMCXジャックの樹脂部が熱で溶けて使用不能になるため、
手早く実施する。
エポキシ接着剤でジャックは固定する。
(UVレジンだと元々の樹脂との相性がよくないため、力がかかると剥離することがある。)
その他細工。
イヤーパッドへの通過部を閉塞する。
ここは力がかからないのでUVレジンでよい。
片耳できたところ。
なんとここで、巻貝部をくっつける向きを間違えたことが判明。
機能的には問題ないので、遺憾ながらもう一方もこのまま製作した。
Ver.3としてはこれで完成した。
が、巻貝部接着ミスをはじめとして、いくつかのエラーがあったため、
その修正と、ついでで、当初スキャンデータのままであった箇所のモデリングを行った。
最初からやればいいじゃん。
モデリング結果。
絶対に巻貝部の接着を間違えないよう、接続部に凹凸をつけ、
またハウジングにRLの表記をした。
ついでにロゴを入れた(この後、他人様のブランドを刻印するのはまずいと気づき、修正したが)
プリントしたハウジング。
ここでも肉厚不足が造形して初めて発覚したところなどあり、修正した。
完成したVer.3.5。
Ver.2.75とVer.3.xは低音の出方に差がある(好みでいうと3.xがよい)が、
これは生贄にしたモデルの違いによる差異の可能性がある。
また、Ver.1と比べると、Ver.1のほうが改造の影響がより出ている気がする。
これが渦巻部分の容積差によるものか、材質によるものかなどは不明。
下は、PCでREQソフトから再生した音を、持っている中で最もまともそうなマイクで拾って作ったグラフ。
ベースとした機種が違うものは違いがあるようにみえる。
他は似たり寄ったりのような。。
本当はスピーカー音と違ってドライバーから鼓膜までの特性も加味する必要があるらしく、
結局のところまあよくわからない。