インパルスハンマーのDIY
その3
今回は、ハンマー側の素子を変更する。
自動車用ノックセンサー(非共振型)を使用する。
じつは加速度ピックアップの代わりになるものを検索していた結果、
ついったーにてノックセンサーが実質加速度センサーである旨や、
ノックセンサーをオシロで調べる時にハンマーでたたいてトリガをかけてみる、といったことが載っていて、試してみようと思った。
日本セラミックス協会(セラミックス 42(2007)No. 10、 pp.801-803)によると(下図左)、
https://www.ceramic.or.jp/museum/contents/contents/pdf/2007_10_05.pdf
ノックセンサーは、ノッキング時に発生する振動を検出するため、圧電セラミックスにより発生した電荷を取り出す。
共振型はエンジンごとのノッキング時の周波数に合わせてつくりこんであるが、
非共振型ではドーナツ状圧電セラミックスが広帯域にフラットな一種の加速度センサとなっていて、波形処理によってノッキング振動を検出する。
また、NGKのノックセンサの周波数特性によれば(下図右)、
https://www.ngkntk.co.jp/resource/pdf/product_sensors_plugs_knock_j_03.pdf
低周波数側が分からないが、全体にまあまあフラットで良さそう。重さが気にならなければ使えると判断した。
Boschの非共振型ノックセンサーと、どこのとも知れないものと用意した。
1個2000円程度で購入できる。
まずはボッシュのセンサーの端子に直接BNCケーブルを接続し、ハンマー後端に載せ、オシロに接続、直尺をたたいてみた。
受信側は加速度ピックアップにしてある。
なお、チャージアンプからのノイズがハンマー信号に回り込んで大変だった。
(チャージアンプのBNCケーブルのコネクタを触りながらハンマーを持つと多少収まった)
ハンマー信号をボルテージフォロワとかで受ける必要がありそう。
緑がノックセンサーの波形、オレンジが加速度ピックアップの波形である。
ハンマーに加速度ピックアップを載せた時と同じくらい鋭いパルス波形となっている。
電圧レンジもアンプなしでこれだけ出る。
ベースに乗っているノイズがもったいない。
8回たたいてプログラムで処理した結果。記録は12bit、レコード長1M。プラチップ。
3kHzまではかなりコヒーレンスの高い領域が多い。
コヒーレンス関数の250Hzと1250Hzのディップは気になるが。
もしかしたら、上記の周波数特性図の線のなかった~1kHzのあたりを反映しているグラフになっているかもしれない。
ノックセンサー自体が少し重いので、中型以上のハンマーに搭載するのなら、十分選択肢に入る。
今後はアンプを作って確認してみたい。
2024.12.15 追記
アンプモジュールを買ってきたので(回路を組んでいる時間がなかった)、ハンマーに積んだ。
何もそんなに作らなくても。
一応受信側センサーもノックセンサー+アンプモジュールを作ってみた。
ハンマーを一番軽いハンマーにノックセンサーを載せたもの、
センサーをa)加速度ピックアップ、b)MEMS3軸加速度センサー、c)ノックセンサーとして、それぞれ4~5回たたいて試験した。
なおこのときは対象は300mmステンレス直尺、たたくのは下端、センサーは150mm位置、レコード長は100kとした。
また今回からオシロの入力モードをACにした。(パワースペクトラムで0Hzが最大となっていたため)
グラフ描画では、入出力パワースペクトラムを追加し、パワースペクトラムとFRFの縦軸をdBにした。
グラフは上から、a)b)c)の順。
入力パワースペクトラムはところどころ落ち込んでいるが、グラフ描画域より高周波側まで全体におおむねフラットな入力ができているらしい。
センサ側パワースペクトラムは、やはり加速度ピックアップのピークの鋭さ、ピークの多さは際立つ。
これは感度のほか、センサ質量が他と比べて小さいことが大きく影響していると思われる。
測定対象が軽量なため、とくに振動特性にセンサが影響を与えるのだろう。
MEMSセンサーは、取り付けに大きな磁石を使っていたせいで、質量がかさんでいること、磁石面積が大きく貼り付いた時に振動特性を変えてしまっている可能性がある。
また最高加速度8Gの制限は、振動が飽和することによるコヒーレンスの低下が発生する。
今回の測定対称のような、大振幅する構造の腹にセンサーを取り付ける用途だと不利となる。
センサーもノックセンサーとしたものは、両面テープで取り付けたが、やはり質量が大きい影響が出ているように見える。
ノックセンサーに元々ついていたケーブル部のシールドがなかったため、ノイズが入ってしまったが、わりあいコヒーレンスは良い。
どのセンサーで取得したFRFでも1.5kHzのピークがあり、その部分のコヒーレンスが低値ではないため、そのピークはおそらく本当にあるのだろう。
加速度ピックアップでは他いくつか低周波側にピークが見えているが、他センサーでは対数表示だとはっきりと確認できないか、コヒーレンスが低い。