レーザ彫刻機に限らず,中国でネーミングされた製品は,数字を盛ったり,
よくわかんないけどすごそーな数字を書いたりすることが横行している.
例えば,リチウムバッテリ関連製品はひどいことになっている.
レーザに関していえば,誰かが書き間違ったのかmWと書くべきところを
MWと書くことが多発しており,まあ発電所1基分のビームが出せるならやってみろよと
ツッコミが入れられる程度の知識は必要になっている.
ただまあ結局のところ販売者が主張する出力が出ていないことは間違いない
(し,販売者が言うより出ている確率は限りなく0に近い)ので,
きちんと取り扱うためには実際のところどのくらいなのかを把握する必要はある.
そこで光出力を測りたいが,光パワーメータはびっくりするくらい高いので,
今回は研究室の測定器を借りに彫刻機をスーツケースに入れて運んで持って行った.
実験内容としては簡単で,光パワーメータに向かってビームを照射する.
ここで「レーザーを撃つ」とか言わないようになるとプロっぽくなる.
あと,センサ(ここではパイロエレクトリック素子という焦電作用を利用したセンサ)に,
集光した状態で照射しないこと.これを守らないとセンサの表面が傷んでゆく.
受光漏れがない程度にビームが広がったところを確認してフルパワーの測定をする.
この彫刻機では焦点調整機構は存在しないので,彫刻機の両側をラボジャッキで支え,
高さを変えることでセンサとの距離を変更した.
今回使用したパワーメータの表示部.これとは別に測定部があり,空冷されている.
結果
本測定の前にフルパワーで試験すると,なんか冷却ファンの回転数が落ちるような音がすることに気が付いた.
電圧降下が電源が原因で起きていると困るので,安定化電源からの給電に変更してチェックしたところ,
電力要求は最大で12 V 1.7 Aしか要求されないが,確かにファンの回転は落ちることが確認できた.
これは電源コネクタ以降末端までのどこかでボトルネックがあることを意味しているが,
短時間で検証することは難しいのでそのままにすることにした.
気になる出力はというと,まあパワーメータの対応波長域とかの問題もあるが,平均3.7Wとの表示.
スペック通りにピーク(10 Wモジュールでは100 ns Duty 50 %らしい) が出てるなら,ピーク8W程度ということになる.
さて,ここでさっきの安定化電源の示した値を思い出してみよう..12 V 1.7 Aだ.
つまり,「空冷ファンも動かして」20.4 Wしか消費電力がない.
実際にはファンが0.15 A,1.8 W電気食ってるので,その分を除外して計算すると発振効率は20 %.そんなもんだろう.
仮に測定値が機材の都合でアンダーに出ていたとして,じゃあどの範囲に入っているべきかというと,
光エネルギーは無から生じたりは通常しない以上,消費電力と変換効率で予測できる.
現状のLDの変換効率は通常3割,がんばって4割くらいなので,
回路損失無し変換効率3割で見積もると,平均5.6 Wが上限だろう.ピーク15 Wはまず出そうにない.
ようするに,(おそらくこの業者だけじゃないんだろーなと思うが)
カタログスペックや売り出しタイトルの出力の数値は測ったわけではなく,
おおむね消費電力の値をそのまま表示してるだけなんだろう.
何より大事なのは,サバ読みがあったにせよ,この機械は現に加工ができてるってこと.
ノギスへのマーキングの様子.
カメラセンサに保護をせずに撮影するとこんな風に写る.
正直あまりやりたくない.
「マーキング2」の動画の写りと比べるとレーザ光の影響がよくわかる.