KP3Sの改修

3Dプリンタ,いま使っているのはKingroonのKP3S.
PETGを使用していてゆっくり造形している範囲であれば特に文句はないが,
大きいものを造形すると非常に時間がかかること,
そうなると,プリンタからあまり目を離したくないので速度を上げたい.


プリンタ速度を上げようとすると,脱調することによる造形不良が問題となる.
この原因は,加速度などの調整不足のほか,
造形中に樹脂かすをノズルが踏むときにずれることがある.
このあたりはオープンループ機材の宿命ではある.
クローズドループ化をするなら,回転センサと補正回路をステッピングモータに追加する方法と,
サーボモータに換装する方法がある.
今回は,KP3SのXY軸モータに利用されているnema17サイズのモータに合うサーボモータがあったので,
(JMC-motion社,iHSV42-40-07-24)これを利用する.

まずモータを換装する.
ベルトのテンションが高いので,がんばらないと元に戻らないかもしれない.

ケーブルはXもYもモータはたいして動作する箇所ではないが,一応ロボットケーブルにした.

KP3Sのメインボードとの接続は,(写真を撮り忘れたのでaliexからとってきたが,)
各軸のステッピングモータドライバが載っているが,XとYのドライバを取り外す.
External driverポートにSTEP/DIR/ENABLE/GNDが出ているので,そこから信号を引き出した.

電源はカタログスペックの最大出力から,多めに見積もってXY軸は別電源としたが,
結果的にはほとんど電流を消費しないため,電源は一つでもよかった.

元々ついていた電源もインクジェットプリンタのインクをこぼして以来不調となったため,更新した.
電圧と電流が表示できるものにした.

サーボモータ化したことで,ステッピングモータのときと回転当たり必要パルス数が変わってしまう.
これを訂正するため,また加速度や最高速度の設定の問題もあるため,ファームウェアをMarlinに変更した.
ファームの加速度設定等はNCコードの読み込みでオーバライドされるため,最低限最大値のみ変更しておく.
サーボモータの受け入れ可能周波数にも限界があるため,動作させたい速度を考えてモータのpulse/revを設定する.

とりあえず指令に基づいて動作するようになった段階で,サーボチューニングをする.
サーボモータは買ってきた状態の設定では使い物にならないので,
最低限オートチューニングでもよいので設定ソフトでチューニングする.
設定にはシリアル通信が必要である.
動かす質量が異なるので,発振しない条件となるのはXとYとで異なるはずだ.

低速で動かしたときと,高速で動かしたときでも微妙にセッティングには変更が必要となる.

システム.

電源(右)が本体,左はXY軸モータ用.
フィラメントケースは聞いているのかわからないが使っている.
綿棒はノズル周りの清掃用.よくノズルが緩んで樹脂漏れが起きる.

curaスライスソフトでデータをつくるが,ここは本題から外れるため割愛する.

動かしたところ.テストデータはBenchy.いわゆる舟.

速度500mm/s(1層目のみ50mm/s),加速度4g,
jerk(一般的な躍度とは異なり,3Dプリンタでいうjerkは,静止状態から急に出せる速度の指示)100mm/s,
0.2mm/layerのとき32分40秒,0.3mm/layerのとき21分58秒.

XYモータはほとんど発熱しない.

PETGとしては高めのホットエンド260℃,これは層間の接着性のため.
この状態で小領域の造形が続くと冷えずに造形物が軟化するので,ファンは最大.
ヒートベッドは70℃,これは1層目のために設定している.

0.2mmレイヤー

0.3mmレイヤー.上面が貼り切れない.
樹脂供給が限界かもしれない

今回はプリント速度高速化のために脱調しない機材へと改修した.
高速化のためには駆動部が軽いcoreXYのほうが有利とか言われているところもあるが,
片持ちばり構造のプリンタでもなんとかなることが分かった.