カラーアルマイト -DIY実験向けの検討-
実験室での実験結果を基に,DIY実験での注意点,手抜きや簡略化の検討をします.
○材料
・アルミ以外がくっついた状態のものは基本的に無理
何かの部品をアルマイトしようと思うなら,圧入されている鉄鋼等の金属はなんとしてでも外す(ステンレス含む).
大抵の金属はアルミより表面の酸化膜の絶縁性が弱いか均質でないのでイオン化傾向に関係なく先に溶ける.
実験後溶けてしまってもかまわない部品なら,溶かしきってしまうというのも手ではあるが.
・高強度ジュラルミンはカラー化が難しい
ただ被膜を付ける,色なんてどうでも良いなら可能.
ジュラルミンは高強度化するための合金添加物(おそらく,FeやCu)がアルカリ処理やAC電解時に表面に濃縮されて残留するので黒くなる,
しかも分布が一定でなく斑になるので美観はあきらめる事になる.
・添加物の入っているアルミかどうか解らないし.
元部品にアルマイト処理がしてあるものは大抵は再処理できる.
塗装してある部品はかなり怪しい.メーカも難しいと認識していて強度の低い塗装処理を選択していることが多い.
クリアー塗装のものもあるので注意.
・鍛造品は避ける.
鍛造時の材料の流れの跡が濃淡となって現れ,色を入れたとき均質にならない.
ダマスカス鋼みたいになってしまう.
それでも良いなら可.
○電源
最終的な条件の調整は面積当たりの電流量で行います.
できれば電流コントロールまで付いている高級な安定化電源が欲しいが..
電圧のみコントロールされている電源の場合,テスターで電流をモニターするのは必須.
そもそも電源装置ですらない場合,鉛バッテリーとか,,の場合,
モニターしていても条件が変化したとき調整のしようが無いので,アルマイトはできてもカラー化はできない可能性が高い.
○薬品類
・水
工業での話はあまり気にしないで水道水で十分のよう.
というのも,彼らは水を循環させて使ったり,放り込んで放置というようなこともするだろうし,
最終的な品質もDIYとは異なる次元の話をしているので.
・硫酸
実験中に意外と合金添加物で汚染されるし,高品質である必要性はあまりない,ような気がする.
イオン化傾向の小さい金属元素は事前に電解して負極で回収できる.
イオン化しやすい元素は,多分電解に悪影響を出してこない.
溶解アルミイオンの回収の心配をしないといけないほど実験のバッチを繰り返すDIYerはきっといない.
濃度は高速条件でなくてもそれなりに必要なので,希硫酸は煮込んで水分を飛ばす等の処理が必要.
(硫酸は水より沸点の高い不揮発酸なので濃縮できる,ただし水はねに注意)
キッチンケミスト向けの条件設定
・脱脂用界面活性剤
食洗機用の泡立たない合成洗剤.
・そもそも硫酸下での脱脂をしないで洗浄で済ませる
・NaOHエッチング処理もあきらめる
・電解用硫酸は,H+より後のイオン化列に位置する金属は,実験前に陽極を炭素とし,電解して陰極に析出させて回収すればよいので,廃バッテリ液でもたぶん何とかなる(添加Caイオンの挙動がわからないのと,Pbイオン入りは処理に困る気がするが).一般的にはバッテリ用の新品の硫酸を煮込んで濃縮したものが入手しやすい.
・陽極周りはアルミのみで構成する.ステンボルトは失敗の元となる.電極の固定は,ネジ穴が切ってあればアルミボルトかプラスチックボルトで固定.ペンチでの圧着固定は高難度.
クランクなどネジ穴の大きいものは,アルミワイヤを螺旋にしたものをいれて内径を広げて接続した.
・安定化電源を用意できないときは,最低でも電圧モニタ,出来れば電流モニタも行う.電解の異常が表れる.
・自動車用バッテリやPC用電源ユニットをソースとする時は,発生電圧に合わせて硫酸濃度を決定する.
・硫酸銅は,銅を焼いて酸化させた上で硫酸に入れると手に入る.
・廃液は,電解に廃バッテリ液を使っていなければ,金属イオンはAl,Cu,Feなど害のないものだが,専用の処理ルートが利用できるならお願いする.出来なければ中和し,濃縮して結晶化させると主にNa2SO4の固体となる.ガラス瓶に入れて保管.あるいは,中和せず濃縮して干上がった廃バッテリに詰めて出してしまうと硫酸と金属イオンを処理できるルートに乗る.