robotarm

定年で退職した先生の研究室から放出された三菱のムーブマスターRM-101をいただいてからしばらく経つ.

(なお,放出のされ方がダイレクトに粗大ゴミ置き場にイン,という大変大雑把な方法であった)

MOVE MASTER RM-101は,教育など用として三菱から販売された初期(198x年)のロボットアームで,

5自由度の関節とグリッパの計6個のステッピングモータを搭載している.

この後のモデルになるとサーボモータ仕様に変化していくので,

おそらく大型化できないとか脱調が位置決め利用に差し障りとなったのだろう.

元々は,14pinのセントロニクスポートから通信して,関節角度を指令して動作もできたようだが,

今時のパソコンにはそんなポート存在していないし通信内容も不明なので,ただの置物と化していた.

ネットをたどると,このままの仕様で通信して動作させようと試みているひともいる(こちら)(海外1資料)(海外2動画あり)ようだったが,

Shimalithは旧式のインタフェースを廃して,新たにモータドライバなどを組み込んで再生しようと考えた.

普段からLinuxCNCを利用しているので,制御系はそれに任せることにした.

何とかの一つ覚えっぽいが,1種類入出力の方法を手に入れると,

次からは応用がきくようになり,開発の手間が減らせて便利だったりする(言い訳).

機械とソフトを組み合わせてどうしたらおもしろいものになるか考えた結果,

アナログコントローラを2つ使って,4スティックで6モータすべてをマニュアルで動かす,

というショベルカーみたいなちょっと高難度の操作を要求するものを計画した.

(LinuxCNCには,「逆運動学モジュール」,平たく言うとアームの先端位置を指令すると関節角度を決めて勝手に動かす,

という仕組みも搭載されているのだが,今回は某イベントに間に合わせるという時間の都合と,

手首の動作方式が制御に馴染まないとか6軸ないと厳しい,という理由で見送った)

まず,アーム台座部の底板を外して,古い基板をとりだした.

Z80ですな.

モータケーブルがコネクタ式になっていたので,そこから切り離して,基板を取り除いた.

それから,(この空間にモータドライバをおさめるのは困難だったので)モータの配線を機外に延長した.

ここでケーブルの先にコネクタがついているが,これを接続する中華モータドライバがちょっと信用ならないものだった

(フォトアイソレーションできてないとか最大パルス数が低すぎるとかもあったが,

個人的にはヒートシンクで感電したことが大いにやる気をそいだ)ので,

別のドライバを新たに調達し,それに合わせて端末に圧着端子を取り付けなおした.

元のモータはユニポーラタイプだが,モータドライバがバイポーラタイプなので,

モータあたり4本引き出している.

モータドライバを接続して各軸をチェックしてみると,肩関節にあたる大きいモータの減速機が傷んでいるらしく,

モータは回るが負荷の小さい下げ動作しかできず,上げ動作だと空回った.

の動画でガラガラいっているモータが故障している.

この動画のときはさりげなく下げ動作だけ行ってごまかした.

このモータ,分解はできそうにないし手に入りそうにもないので,交換を検討した.

ギアヘッド付きステッピングモータは手には入りそうだったが,お値段がひとつ1.2万円ほどなさるということなので,却下.

HBモータの同じくらいの取り付け角のモータなら手元にあったので,それにすることにした.

ユニポーラモータをバイポーラ動作させると多少トルクが稼げるし,元がPMモータだから減速機が必要だっただけだろう,と.

新モータ取付には2つほど問題があって,

まずモータのシャフトのサイズが違っていて,新モータのほうが直径が大きいので,ボール盤で歯車の内径を大きくした.

これで後戻りできなくなった(笑

それから,ギアヘッド付きモータと出力軸の位置が変化するので,

モータ取付用のねじ穴をサイドパネルに切りなおした.

ねじきりのときにサイドパネルをあけたので,ついでに様子を見てみた.

旋回部と,トランスが見える.トランスは旧仕様のときに基板に電力を供給するためのもので,

現在は電気的に接続されていないが,カウンターウェイトとして必要なのでそのままにしてある.

制御系はHIDプロファイルのUSBコントローラからの信号を,LinuxCNCで各軸のジョグ速度指示に変換し,

ノートPCのPCカードからパラレルポートを出口としたモータ移動パルス信号を出力し,

それをモータドライバがステッピングモータの動作に変換し,各モータに伝える,という流れ.

ちゃんとパルスをタイミングよく出し続けられるノートPCかどうかは機種により当たり外れが大きいので,

事前に良さそうなのをチェックして使っている.今回はCore2Duoの中古FMV.

わずかにトラブルがありつつも完成したのがこちら.

肩関節の減速機がなくなって抵抗が小さくなったので,電源が切れると倒れるのはご愛嬌.

左のコントローラの左スティックの左右で旋回,上下で肩,右スティックの上下で肘,

右のコントローラの左スティックで手首の上下と旋回,右スティックの上下でグリッパとなっている.

手首のモータのつき方が自由度と一致していないため,

斜めに入力して2モータ同時に動作させてはじめて手首が回転するという,高難度の操作を要求するが,

がんばれば指4本で一人で動かせるかもしれない.

2人でわいわい動かしてもそれはそれで楽しいかもしれないが.

動作の様子がこちら.

コントローラとの対応を見せる用の動画なので,1軸ごとしか動かしていないが,全軸同時にも動作する.

今回は展示用なので,触って動かせるほうが楽しいかなと思ったのでマニュアル操作だが,

後で時間が取れたら,角度指令で自動動作させてみようとは思っている.

そうしないと,間にパソコンはさんだ意義がなくなっちゃうし.