3Dプリンタつくってみて

3Dプリンタ,ホットエンド,ヒートベッド,位置決め装置と,エクストルーダ以外を順に自作してみて,
思ったことをてきとーに書いておきます.

ホットエンド
風が吹いただけで吐出不良になる,というレビューを見たことがある.そんなことあるのかなと思っていたが,
今回の構成ではそんなことなかった.いわゆる一般的な構成のプリンタを持ってないので正確なところはわからないのだけれど,
たぶん熱量不足だとおもう.プリンタ用として売られているDCのヒータはだいたい40W位で,
対するはんだごてヒータはメーカ公式で50Wとなっているものでも,実際には温まり始めはもっと高い消費電力になる.
今のホットエンドでは.吐出せず定温状態を維持するのに32Wくらい必要としている.吐出すると樹脂を溶融する分さらに電力が要るだろう.
PID制御だなんだといっていても,完全にフルパワーになってしまったらそれ以上制御のしようがないので,
ある程度の余裕が必要なはず.その余裕が無いのではないだろうか.

それから,電源の容量不足で電圧が出なくなってあたたまらないというパターンもあるらしい.
このへんは,大容量のATX電源に変えるというのも一つの手ではある.
しかし,個人的には,消費電力の大きいものを位置決め機器と電源共有するのはどうなのとか,
熱に変えるだけだから交流のままでいいじゃんとか,,思わないでもない

温度計をどこにするかは非常にだいじで,おそらく他機種の設定温度データが役に立たない原因のひとつとなっている.
接触式のサーミスタや熱電対でも,非接触の赤外温度計であっても,
ほんとうに大事な温度はどこなのか,考えて計測する必要があると思う.
自作ホットエンドの温度分布.

ヒートベッド
実際に今回5℃の範囲でオンオフ制御されるヒータを使ってみて,確かに1層目の貼りつき性は良くなったが,
本当に役に立っているのかといわれると,非常に微妙というかなんというか.
樹脂が反らないようにするために温度を上げているのだけれど,ほんの何層かでヒータの熱が伝わらなくなる.
ベッドが80℃台だったとき,上の層は60℃台になっていた.
下の写真は,上の写真の温度範囲を調整して,主要な箇所にスポット温度を表示したもの.
上下の温度が中央部にあまり伝わっていない.

もっとベッドの温度を上げまくる,という方法もあるけれど,今回のプリンタ構成では,
消費電力50Wのヒータのデューティが80℃設定でもON時間多めで,
しかもベースへの伝熱が激しいので(Z軸テーブルのアルミ板が40℃くらいになった)これ以上上げるのは難しそうだった.
造形物を温めたいのが本来の目的なので,ノズルに干渉しない程度にベッドの周りに壁を作って空気を保温するか,
いっそドライヤーで熱風を送ったほうがましな気がする.ただ,ドライヤー方式だと,システムで200Wの消費電力に,
さらに数百Wを積み増すことになるので,長時間かかる造形ではあまりやってみたくないなぁと.
ヒヨコ電球的な赤外線による熱源とかもいいかもしれない


フレーム がっちりvsゆるふわ
フレーム構成はがっちり剛性を上げたフライスみたいなものと,
加速度重視のために軽く,最低限の強度だけを持たせる方法が考えられる.
造形速度を考えると後者だが,イージーモードはじつは前者なのかもしれない.
理想的には,FDM方式のプリンタは,軟化した樹脂以外にノズルが触れることはない.
ないはずなのだけれど,実際には固くなった樹脂との接触が結構ある.
造形中にゴミ巻き込んで盛り上がったときとか,高い加速度でフレームが変形したときとか.
剛性があれば,フレームは変形しないし,盛り上がった部分も押し均す形で平らにできるので,NCで予期した通りの経路を通れる.
ゆるふわなマシンの場合,押し均すことはできないので,造形に問題があると飛び跳ねて後ろの層に引きずることが多い.
そのかわり,マシンの剛性がないので,ノズルやテーブルが変形することで造形不良の場所をなんとなく乗り越えられるかもしれない.
中途半端に剛性があるのにモータにトルクが無いのはかえってつらそうに思える.

造形速度をあげようとすると,ガッチリとしたフレームにねじ送りだと速度も加速度も出しにくくなってくる.
強力なサーボモータでもない限り解決できない.ベルトドライブなら比較的簡単に速度が出せる
(その代わり分解能が低くなるが,この方式のプリントの造形物に形状精度を求めるのかと言われると,ないような気がする).

次に問題になるのが加速度.往復動作がおおいプリンタでは,その度に加速減速をする必要がある.
NCコードシミュレータで計算した造形予想時刻と合わないぶんが加減速に起因する遅れだったりする
(実行時間予測の手法の中にはNCコードの消費行数から実行時間求めている簡易なものもあると思う).
小さい直線補間を繰り返すところでは,指定した速度が出ていないこともある.
だから,加速度を増やすと移動速度の遅い時間が短縮されることで造形時間短縮に大きな効果がある.
加速度はモータのトルク次第だけれど,たいていの駆動方式ではXY2軸のうちの一方がもう一方に乗っかっている形式のために,
トルクを増やそうとすると重量が増えるなんてことにもなりかねない.
強度は面積に,重さは体積で効いてくるので,軽くしたほうが手っ取り早い.
重力の影響でフレームがしなったり,隙間(アソビ)がおおきい装置だと,加速度が重力に対して相対的に大きくなってくると揺れやがたつきが出て,
そこが加速度の限界になる.今回の機材はもともとの用途が高速動作するようなものではなくてガタが各所にあるので,ベルトドライブの割には穏当な範囲にしてある.

デルタ方式のプリンタ,手元にはないけれど,あれは位置決め機構の実際に動くところに重量物がホットエンド以外こないようにできるので,加速に有利な形式.
そのかわり,位置決めにはそれなりに計算が必要だったり,場所によって分解能が変わってしまったりと難しいところもある.


次元断層
造形の途中に形状が左右にずれていってしまうことがある.これはよくみると原因が特定できる可能性がある.
ある層の造形中に突然止まったり逆方向へ動いたりするなら,脱調の可能性が高い.脱調の原因は,加速度や速度の上げすぎ,
まれに制御するマイコンやPCの信号送出タイミングのミスが考えられる.造形に盛り上がりが発生してそこにノズルがぶつかった時なら,トルク不足.
速度の遅い外周の造形と速度を出すinfillの造形のどちらで起こるかなど,じっと事故の瞬間を見ていればだいたい特定できる.

層の変化した直後の造形でずれるパターン,珍しい気がするが今回経験したのはこれ.
これは通常の脱調とは様相が異なっており,大量の方向転換を含む層内の造形で脱調が起きないのに,
Z方向の送り操作があった直後だけずれる,ときがある,という.前述の脱調対策は一通り試して,なおうまく動作しなかった.
結局,オシロスコープで波形を見ているときに,パルス幅がICの規定に足りていないと気が付いた.
PC(LinuxCNC)の設定で既定のパルス幅を入力していたが,その設定が無効化されるオプションが,
ひな形にしたフライス改プリンタの設定から引き継がれてしまっていたためだった.パルス幅をきちんとセットしたところ,問題は発生しなくなった.
なお,なぜ「パルス幅が少ないと,だいたい動作するのに層変化時のみ脱調する」のかは不明だった.
可能性としては,ステップパルスが来ない時間が続いたあとの動作に,動きはじめのパルスの幅が厳密に要求されるのがこのステッピングモータドライバICの仕様である,
ということが考えられる(今回はTB6560AHQを使っていた).
よそでも起こりえる普遍的な問題かどうかは不明.

積層物にできる周期的な縞はほんとうにZ軸の問題なのか
この機械で上の次元断層問題を解決したあとでも,ごくわずかに積層にできるXY方向の周期的なズレが発生した.
周期的なため,一見Z軸に問題があるようにも見えるが,この機材のZ軸は,テーブルこそ弱いが,
送り機構自体はLMガイドアクチュエータで,これが信用出来ないような高いレベルのことをやっているとは思っていないし,造形物によって周期が違うので他に原因があると思う.
まだちょっと良くわかっていない.

マイクロステップって信用できるのか
ベルトドライブXY軸なので1mm進むのに必要なステップ数が少ない.そのためマイクロステップを掛けたが,
X軸で3ステップ目でまとめて動く,みたいなことが起きて実質的な分解能が削られた.
モータドライバ基板の励磁バランスがあまりよろしくないのかな,という感じ.
ご提供いただいた1/128マイクロステップまでできるモータドライバに変更すると,かなり改善されたようだが,
それでもステップごとの移動量はダイヤルゲージを当てて読み取る限りだと一定ではない.
マイクロステップの理論分解能をそのまま信じて性能いっぱいまで使った機械を作ると,おそらく困るだろう.

マイクロステップ分割数がおおいほどモータ駆動音が静かになるのは事実.

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