DIY 自作シュリーレン装置その2 誰にでもできるシュリーレン撮影

はじめに
前回,シュリーレン法の概略の説明と,凹面鏡を使ったシュリーレン撮影の実例をご覧いただきました.

・凹面鏡にできて凸レンズにできないことはないよね
一般的には凸レンズ方式では並行光のテストセクションを含む2枚レンズ構成が主流です
(というか,凹面鏡でも教科書的には2枚構成が主流なわけですが).
前回,凹面鏡1枚構成のものをやってみて,研究室のシュリーレン装置もいじらせてもらって,
凸レンズ1枚でもいけるんではないか,という確信を得たのでやってみることにしました.

実際のところ,世界初のシュリーレン法による弾丸の衝撃波の撮影に成功したマッハの実験(下図)でも,
凸レンズ1枚の構成を用いているので,とても伝統的な手法ともいえます.
マッハによる実験(可視化情報ライブラリー1 流れの可視化入門より引用)


(要は,テストセクションを並行光にするのは,距離を稼いで感度を上げるためと,
テストしたい対象物に厚みがあったとき,並行光でないと何見てるんだかわからなくなるからコリメーションしてるんであって,
そうでない,薄い対象物のテストなら収束光でも問題ないはずなわけです)

必要なもの
・ LED懐中電灯などの点に近い光源とアルミホイル
・フレネルレンズのささえ(ブックエンドとか)
・ナイフエッジ(薄くてしっかりしていて自立するならばなんでも良い)
・撮影機材(絞りとフォーカスがマニュアルにできることが望ましい.)
・高さ調整用のもの(三脚とか,辞書とか,CDのケースとか,何でもよいので光源とカメラの高さを調節できるように)

セットアップ

1.光源とする1-3WのLEDライトにアルミホイルをかけ,中心に小さな穴をあける.
前回は適当な大きさでしたが,体温による揺らぎまで見たければ,ある程度まではちいさくする必要があります.
今回は,画鋲の先で突いて小さめに穴をあけました.
(必要以上に小さくしても,フレネルレンズの能力を超えてしまえば余計に暗くなるだけで意味なくなります)
なお,限られた距離で光を拡散させるため,できるだけLED素子とピンホールが近接させられるライトが望ましいです.
今回は,ライトのヘッドが外れてLEDがむき出しになる機種のライトを使用してます.

2.光源から約0.5mの位置にフレネルレンズを設置する
今回はツルツルの面が光源側に来るようにします.
用意したフレネルレンズは薄くて片持ちで立たせるとたわんでしまって,収差が出る原因となるので,
左右の両端,上のほうを支えてあげるようにします.
点光源の光軸に対してなるべく直角に入るようにします.

3.光源の高さをフレネルレンズの中心に合わせる.
いろいろと面倒なので左右上下と光軸を合わせておきます.

4.フレネルレンズから約1.1mの位置にカメラレンズの前端を置く
同じフレネルレンズを買っていて,同じ位置関係に光源とフレネルレンズを置いていれば,だいたい位置は同じになるかと思います.
(APS-Cサイズ素子で焦点距離200 mmのレンズを使った場合.動画撮影モードで有効な素子サイズはもう少し小さくなっています)
機材の構成が違うと見やすい装備は多少変化するかもしれません.
例えば,フルサイズ素子で動画をとれる機種なら,視野角的にもっと焦点距離の長いレンズに変える必要があるかもしれません.

カメラと光軸の高さ調整もしておきましょう.絞りを一時的に絞るとフレネルレンズからくる光の見え方が小さくなるので,
位置や距離が合わせやすくなるかもしれません.(視野がもったいないので位置を合わせ終わったら絞りは解放にします.)
前回と同様,最初のうちはレンズキャップをしておくと集光した光が見えやすいので位置の調整がしやすいです.
焦点位置はテストするものの位置か,フレネルレンズの表面に合わせておきましょう.
カメラが光軸から下にずれているとき

カメラが光軸からずれていて,絞り込んだとき

絞り込んだ状態で,カメラの高さを光軸に合わせたとき

位置があった状態で,絞りを開いたとき


ここまででシャドウグラフ法ができるようになりました.

5.フレネルレンズから約1.1mの位置にナイフエッジを設置する
同じフレネルレンズを買っていて,同じ位置関係に光源とフレネルレンズを置いていれば,だいたいナイフエッジの位置(集光位置)も決まってきます.
最後の調整は前回の記事を参考に,カメラの直前,挿入したときにできるだけ明るい部分が同時に暗くなる場所を探して前後微調整します.

セットができたら,フレネルレンズとナイフエッジの間,フレネルレンズに近い側でいろいろとテストして遊びましょう.
動画のほうが楽しいと思います.
静止画の場合,ある程度シャッタースピードを上げないと動くもやの様子は見えにくいかもしれません
エアダスターの弱い噴出の様子の写真(画角の関係上不要部をトリミングしてあります)


もちろん光源からフレネルレンズ間の距離はフレネルレンズの焦点距離より離れていれば多少変わっても撮影可能ですが,
(感度や視野など見え方はは変化すると思います)
その際はフレネルレンズからナイフエッジまでの距離などが変化することになりますので,適当に調整してやってください.
感度をチューニングしたり,点光源が拡散しなくてレンズとの距離をとらないといけないときは変えてみてください.

あと,フレネルレンズでなくてもふつうの凸レンズでもできるのですが,なかなか安価で大きいものが手に入りにくいです.
研究用途のシュリーレンでも大口径では凹面鏡に移行することが多いです.


フレネルレンズで色収差が結構出ていますが,観測上あまり問題ないかもです.
かろうじて体温による大気の揺らぎまで見えているのがわかると思います.

まとめ
・DIYなセットアップでも体温による揺らぎまではかろうじて何とかなる(高性能な専用機材には及ばないが)
・レンズを使ったセットアップだとどうしても色収差が出てくるが,意外と何とかなる
・レンズはフレネルレンズでもいける
・光源,ナイフエッジの位置,レンズの性能や配置などの総合力で能力が決まるので試行錯誤の余地が大きい
・厚みのある観測対象をきちんと見たければ光学素子2枚の構成にして平行光の区間を作ろう




参考図書コーナー(タイトルのリンクはCiNii Booksに飛びます,amazonへは書籍画像からどうぞ)

(社)可視化情報学会,株式会社朝倉書店,pp.14-16,1996.
引用したエルンスト・マッハのシュリーレン装置の概略図が載っている.
シュリーレンについては歴史の話が多めで,細かい装置の原理についてはない.

可視化情報学入門編集委員会編,東京電機大学出版局,pp.62-66,1994.
原理,シュリーレン法の像のコントラストを上げる方法についてなど.

流れの可視化学会編,株式会社朝倉書店,pp.312-318,1986.
新版 流れの可視化ハンドブック(Amazonリンク)

流体を観察する人たちにはバイブル的な本らしい.
シュリーレンについては,理論的な話,多種類の装置構成図,光源やレンズの選定,
実際の例などかなり丁寧なほう.
ただしおそらく絶版

Daniel Malacara編,成相 恭二ほか訳,アドコム・メディア株式会社,pp.264-269,2010.
シュリーレンに関する記述はごく少なめ(というかほとんどない).
ページ264-はフーコーテストについて.
前回の反射鏡型シュリーレンはこの手法によく似た方法だとわかる.

Wen Jei Yang,Hemisphere Pub ,PP.193-201 ,1989.

図書館で読んだのは初版でしたが,新版出ているようで,ページずれるかもしれない.


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